3月18日、『サクラ大戦』OVAシリーズのBlu-rayボックスが期間限定販売される。
©SEGA イラスト/松原秀典
このボックスは『サクラ大戦 ~桜華絢爛~(全4話)』『サクラ大戦 ~轟華絢爛~(全6話)』『サクラ大戦 神崎すみれ引退記念 す・み・れ』『サクラ大戦 エコール・ド・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ニューヨーク・紐育(全6話)』という6つのOVA作品をパッケージしたタイトル。きゃにめではこのアイテムの発売を記念して、各作品のキャストのインタビュー連載を掲載する。
『サクラ大戦』OVAシリーズのBlu-rayボックス発売記念インタビュー第2弾にご登場いただくのは、日髙のり子。彼女は、2001年のゲーム『サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜』、2002年の『サクラ大戦4 〜恋せよ乙女〜』、そして2003年のOVA『サクラ大戦 エコール・ド・巴里』、2004年の『サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里』にメインヒロイン、エリカ・フォンティーヌ役として出演している。
シリーズ出演前から、名だたるアニメのヒロインを演じ続けた日髙にとって「サクラ大戦」とはどんな作品なのか? じっくり話を聞いた。
──ゲーム『サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜』のエリカ・フォンティーヌ役に起用された経緯は?
日髙最初「オーディションがあります」という話があって、キャラクター表とセリフが抜き書きされた台本が届いたんです。その後、プロデューサーの広井(王子)さんや音響監督の佐藤(敏夫)さんがいらっしゃる会場で「もうちょっとこんな感じで」「あんな感じで」という指示をいただきながらセリフを言って。本当に普通のオーディションという感じだったんですけど、のちのち広井さんに聞いてみたら「いや、あれ、実はサンプル録りだったんだよ」と言われまして……(笑)。
──広井さんはなんでそんなダマし打ちみたいなことを?(笑)
日髙いまだにわからないんですよ(笑)。ただ、私がオーディションのお話をいただいたときには、本当に「エリカ役は日髙で行こう」という話にはなっていたみたいです。それでいったん私にセリフを読ませてみて、そこからまたエリカのイメージを膨らませたとはおっしゃっていました。
──エリカ役を射止めた理由ってご自身で分析できたりしますか?
日髙それもわからなくて(笑)。広井さんがキャラクターデザインの藤島(康介)先生に「エリカは日髙さんにお願いしようと思ってるんだけど」というお話をしたら、「まんまだね」って返ってきたそうなんですね。あとゲームの収録後に脚本のあかほり(さとる)さんにお会いしたら「エリカは日髙さんをモデルに当て書きしたから」「だから収録は楽勝だったでしょ?」って言われたんですけど、私としてはそれがものすごく不本意だったんです。「私、あんな、天然ボケの枠にすら収まらない、突拍子もないことをしでかすキャラじゃないでしょ!」「もっとちゃんとしてるでしょ!」って(笑)。
──失礼ながら、我々プレイヤーも2001年当時「日髙さんの声、いいなあ」と思いながらゲームを遊んでました(笑)。
日髙なので「私の思う日髙のり子」と「みなさんの思う日髙のり子」って違うんだなあ、ということを知りました。私の中で日髙のり子は明るくて元気なんだけど、しっかりしている役者だと思っていたのに……。
──「突拍子もないことをしでかす」人だと思われていた(笑)。では、収録は「楽勝」ではなかった?
日髙本当に突拍子もなくて素っ頓狂なキャラクター……「なんでこういうできごとが起きたとき、そういうリアクションをするかな?」というキャラクターだったので「プレイヤーさんに引かれないように、受け入れてもらえるようにするにはどう演じたらいいんだろう?」と、すごく悩みながら録っていました。「この子、絶対に男の子には嫌われるキャラクターなんじゃないかな?」とすら思っていましたし(笑)。
──ところが男の子は嫌うどころか、ちゃんとエリカをヒロインとして受け入れた。勝因はどこにあると思います?
日髙私はもちろんなんですけど、スタッフみんなで作り上げたキャラクターだからかもしれないですね。広井さんや佐藤さんもエリカという人物をどう描くか、悩んでいたみたいなので。そうやって一緒に悩みながらいろんなことを試していく中で、あるとき「このまま探り探り演じるよりも、一度振り切ったテンションでやってみて『やりすぎ』って言われたら出力を抑えるほうが答えを見つけやすいんじゃないかな?」と思って、振り切ってみたら、私もなにかを掴めたし、皆さんも皆さんなりのエリカ像を掴まれたようで。そうやってたくさんの人たちで組み立てたから「突拍子もないんだけど、でもかわいい」エリカになれたんだと思います。
──2001年当時、エリカファンの方の声って日髙さんの耳にも届いてました?
日髙スタッフの方を通して「エリカが歌っている『おはようボンジュール』(「エリカおはようダンス」)が人気らしいです」って聞いて「あれがっ!?」「なんでっ!?」ってビックリしました(笑)。
──でもエリカらしい突拍子もなくて、インパクト十分で、しかもかわいらしい歌ですよ。
日髙オープニングテーマの「御旗のもとに」やエンディングテーマの「未来(ボヤージュ)」も難解な曲だったんですけど、正直「おはようボンジュール」のレコーディングのほうが大変だったんです。「サクラ大戦」シリーズの作曲家の(田中)公平さんと一緒にスタジオに入って、「25秒のムービー用の曲だから」と言いながら、ストップウォッチ片手にマラカスをすごい勢いでシャカシャカ振っている公平さんの横で「ボンジュール! ボンジュール! ボンジュール!」って歌って(笑)。しかもデモテープに入っていた公平さんの仮歌が「ボンジュール! ボンジュール! ボンジュール!」ってすごいテンションだったから「受けて立たねば」ということになり……。汗だくになりながら公平さんと戦っているかのようにレコーディングした曲だったので、まさかあんなにウケるとは思ってなかったんです。
──日髙さんにとっては戦いの曲のはずなのに、みんなはなぜか「面白い」「かわいい」と楽しんでいた、と。
日髙そうなんですよ。一度幕張で「サクラ大戦」のイベントがあって、そこでマラカスを持って「おはようボンジュール」を歌うことになりまして。その話を聞いたときは「いやいやいや」「なんで私をステージ上で独りぼっちにしようとしてるんですか?」「そんなことをしたら私、帰れなくなっちゃいますよ」って言っていましたから(笑)。だけど、本番になって司会の方が「では聴いてください。『おはようボンジュール』です」って言った瞬間、どーっ!って、本当にすごい歓声が上がったんです。
──それでエリカ人気を実感した?
日髙「こんなにみなさん気に入ってらっしゃるのか」って。それからは、エリカであることや「おはようボンジュール」が私の武器になりましたね。海外のコンベンションに行ったときにも、現地のファンの方から無言でマラカスを渡されたりもしましたから。で「えっ? 海外でもですか?」「あなたもですか?」と思いつつ「ボンジュール! ボンジュール! ボンジュール!」って歌ったこともありましたし(笑)。
──その「歌」なんですけど、日髙さんにはアイドルとしてのキャリアがあるし、声優に転身してからもキャラクターソングをたくさん歌っている。そういう“歌える方”には田中公平さんによる「サクラ大戦」楽曲ってどのように映っていますか?
日髙公平さんと初めてお仕事でご一緒したのは『トップをねらえ!』(1989年)というOVAのときだったんですけど、そのときは私が歌えるキーの範囲内で曲を書いてくださっていたので、すごくスムーズに歌えたんですけど、「サクラ大戦」でご一緒したら「私、このキー、出るって言いましたっけ?」という楽譜とデモテープを渡されまして……(笑)。
──10年の時を経て、難易度が上がった(笑)。
日髙だからレコーディングの序盤は「日髙さん、今の音、ちょっとフラットしてる!」ってすごく厳しく言われていたんですけど、あまりにも⾳が⾼くて私じゃなくても誰にとっても難しい曲のときはさすがの公平さんも、途中から空中に丸を描きながら「日髙さん、だいたいここらへんに音を当てて」って言うようになり(笑)。
──でも「サクラ大戦」シリーズ楽曲にピッチの不安定な曲はないですよね?
日髙これが不思議なことに「完璧に音符に食らいつかなきゃ」って思っていたときは神経質になるがあまり歌えなかったんですけど、「あそこらへんかー」と思いながら歌うとちゃんとキーが当たるようになったんですよ(笑)。ただ、レコーディングは何回か歌ったうちの1回だけ当てられればいいんですけど、ショウで生で歌うとなると……。
──テイクを重ねられないから、一発で完璧に歌いきらなきゃならない。
日髙『サクラ大戦』『サクラ大戦2』のサクラ役の(横山)智佐ちゃんは歌謡ショウのような生の舞台でも公平さんの曲をしっかり歌い上げる方なので、プレッシャーではありました。
──ところが広井さんは巴里華撃団には、横山さんたち帝国華撃団の歌謡ショウではなく、小箱の「ディナーショウ」という新機軸を用意していた。
日髙一度、帝国華撃団の新宿厚生年金会館での歌謡ショウの休演日に巴里華撃団がショウをやったことがあって、広い会場で歌って踊ると息が上がってしまって⼤変だなと思っていたので、コンパクトな会場でのディナーショウが始まるときは「会場が小さいのはちょっと助かるな」と思う半面「でもお客さんと近いから誤魔化しはきかないな」という感じで、いろんな気持ちがせめぎ合いました(笑)。あと歌はもちろんなんですけど、生身でエリカを演じることもすごく大変でしたね。
──具体的にエリカだからこそご苦労なさった点って?
日髙ゲームの中のエリカって画面上で派手に動くし、絶えず走っている娘なんですよね。みんなで集まるときには、いの一番に駆け込んでくるタイプというか。「そうなんですか」ではなく「そうなんですかっ!」というテンションでしゃべる子でもあるし。そういうエリカの姿を歌謡ショウよりもお客さんとの距離が近いディナーショウで演じるのはやっぱり大変でした。ディナーショウが始まったころはステージが終わるたびにどっと疲れが出ていましたし。
──とはいえ、ファンの方と対面する機会は……。
日髙もう最高ですね! みなさんの声援に応えたいから、だんだん「私はエリカを着よう」という気持ちになっていったんです。
──「エリカを着る」?
日髙キャラクターの着ぐるみって存在が完璧じゃないですか。声は出さないんだけど、握手をしたりする動きだけで、そのキャラクターそのものになってみせているから。私はそれをエリカでやりたいと思うようになって。そして“エリカを着る”ようになったら、それまでは彼女に対して「なんでそんなにいちいち元気なのよ!」って思っていたのに(笑)、「やっぱりエリカだから元気にいきたいよね」って、よりエリカという人を愛せるようになったし、舞台も面白くなったんです。
──巴里華撃団が一堂に会したのは舞台が初めてですか?
日髙そうですね。そして、みなさんも私と同じようにご苦労なさっていました。たとえば(井上)喜久子ちゃんはロベリア(・カルリーニ)という……。
──懲役1000年とも言われる悪党キャラですよね。
日髙だけど、普段の喜久子ちゃんに悪党の要素なんかないじゃないですか(笑)。
──基本的に朗らかで温和なイメージがあります。
日髙声優さんだから声のお芝居だけだったら、当然どんな悪役でも演じられると思うんですけど、私が私とエリカの関係に悩んだように、喜久子ちゃん自身とロベリアの関係に悩んでいたみたいです。でもそうやってみんなで切磋琢磨して、いろんなことを吸収していくことで喜久子ちゃんはもちろんだし、グリシーヌ(ブルーメール)役の島津冴子さんとも、コクリコ役の小桜エツ子ちゃんとも、(北大路)花火役の鷹森淑乃ちゃんとの絆ができあがった気はしています。ゲームの収録も楽曲のレコーディングも、それぞれ別々にやっていた私たちが、最初の共同作業として「舞台」という新しい挑戦ができたのは本当に貴重な体験ですね。
──そしてそのディナーショウを経た上で、今回のBlu-ray BOXにも収録されるOVA『サクラ大戦 エコール・ド・巴里』が2003年に、OVA『サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里』が2004年にリリースされました。
日髙舞台を経た上でのアニメのアフレコだったということもあるし、そもそもアフレコっていうのはみんなが一番慣れていることだから、全員「楽しもう」っていう気持ちが強かったですね。ものすごく和気あいあいとした現場で、みんな笑顔で楽しくアフレコしていました。
──ゲームと同じ時間軸のサイドストーリーを描いた『〜エコール・ド・巴里』の中でも特に思い出深いシーンってありますか?
日髙ゲームと同じく、まだ華撃団にエリカ1人しかいないっていう場面からスタートする作品だったので、その設定がちょっと懐かしくありつつも「なるほど、みんなは華撃団に入る前はそんな感じだったのか」っていう発見があったのが面白かったのと、あとはロベリアさんですね。男の人と添い寝していたのが本当に衝撃的で(笑)。あのシーンを観たときは「そういうことしちゃう!?」ってみんなで驚いたし、シーツを巻いたロベリアが男性を見送るシーンはあまりに粋でカッコよかったので、みんなで「フーッ!」って歓声を上げたりしていた記憶があります(笑)。
── 一方『〜ル・ヌーヴォー・巴里』はゲームの後日譚を描いたアニメでした。
日髙隊長である大神(一郎)さんが巴里を去ったあとの話だからこその面白さがあるな、と思っています。ゲームだと、みんなで大神さんを取り合うドタバタコメディ的な要素が強かったし、それももちろん面白かったんだけど、その後巴里華撃団それぞれの関係、それも静かな関係も描かれているんですよね。ロベリアとグリシーヌが2人でグラスを傾けながら語り合う、みたいな。そういう大人な雰囲気も楽しめるし、あと戦闘シーンについても、それまでは大神さんの指示で戦っていた5人が自分の意思と判断で戦わなきゃならなかった。そこから垣間見えてくる巴里華撃団1人ひとりの個性や考え方っていうのも、観ていて興味深かったです。
──日髙さんが出演した『サクラ大戦3』からは20年、ゲーム第1弾の『サクラ大戦』からは25年経った今なお、OVAが再リリースされたりと「サクラ大戦」が求められているのはなぜなんでしょう?
日髙25年間ずっとゲームやテレビアニメやOVAや映画などいろんな作品が発表されていて、私たちが出演するものもそうだし、ダンディ団の皆さんの舞台もそうなんですけど、ショウやライブが続いているからこそなんでしょうね。25年前から応援してくださっている⽅々の中には「まだ続きがあるんじゃないか」と思っている方も少なくないですし、逆に舞台やアニメをきっかけに「サクラ大戦」を知って、ゲームをプレイしてみたという若い方もいらっしゃるし。だからこそ私もシリーズに関わる1人として、まだまだ「サクラ大戦」と一緒に夢を見続けたいですね。
(取材・文=成松哲/撮影=はぎひさこ)
プレゼント情報
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応募締め切り
2020年3月25日(水)23:59まで
第一弾
小林沙苗 インタビュー
第三弾
富沢美智恵 インタビュー
第四弾
横山智佐 インタビュー