3月18日、『サクラ大戦』OVAシリーズのBlu-rayボックスが期間限定販売される。
©SEGA イラスト/松原秀典
このボックスは『サクラ大戦 ~桜華絢爛~(全4話)』『サクラ大戦 ~轟華絢爛~(全6話)』『サクラ大戦 神崎すみれ引退記念 す・み・れ』『サクラ大戦 エコール・ド・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ニューヨーク・紐育(全6話)』という6つのOVA作品をパッケージしたタイトル。きゃにめではこのアイテムの発売を記念して、各作品のキャストのインタビュー連載を掲載する。
現在展開中の『サクラ大戦』OVAシリーズのBlu-rayボックス発売記念連載。その第3弾となる今回は、神崎すみれ役・富沢美智恵のインタビューをお届けする。
1996年のゲーム『サクラ大戦』、1998年の『サクラ大戦2 〜君、死にたもうことなかれ〜』、2002年の『サクラ大戦4 〜恋せよ乙女〜』に神崎すみれ役として出演した富沢。彼女の熱演もあり、すみれはシリーズの中でも高い人気を誇るキャラクターに。1997年に『サクラ大戦 桜華絢爛』、1999年に『サクラ大戦 轟華絢爛』と帝国華撃団の姿を追ったOVA2作がリリースされた上、2003年には、すみれが華撃団を去るまでの物語とその引退公演を描いたOVA『サクラ大戦 神崎すみれ 引退記念 す・み・れ』も発表された。
富沢にとって神崎すみれとはいかなる人物なのか? 2人の25年の歩みを振り返ってもらった。
──富沢さんと「サクラ大戦」シリーズ、そして神崎すみれの出会いのきっかけは?
富沢1994年12月25日に目黒区公会堂で「VOICE」というソロライブをやったんですけれど、そこに(真宮寺)さくら役のちーちゃん(横山智佐)がプロデューサーの広井王子さんを連れて観にきてくださったんです。
──そのときにはすでに「サクラ大戦」プロジェクトが進んでいた?
富沢はい。広井さんの中ではすでにゲームはもちろん、将来的には声優さんたちを舞台に上げてショウをやろうっていう構想があったので、当時、いろんな方の舞台やライブをご覧になっていたそうなんです。この日のライブでは「赤が好き」という曲を歌う前に、とある演出がありました。それは会場にいるファンのみなさんに「美人で! スタイルのいい! お嬢様!」って言っていただくっていう(笑)。そして、その言葉を受けて「おーほっほっほっほ!」と私が高笑いをすると「赤が好き」のイントロが始まるというものでした。その時の私の高飛車な台詞と高笑いを聞いた広井さんが「神崎すみれは富沢さんに」と思ってくださったそうです(笑)。
──ファンの方とのある種の“ネタ”、“ジョーク”がきっかけに(笑)。
富沢そうなんです。若かりし頃の私のモットーは「低い物腰、強引な要求」だったので(笑)。ライブでは「あなた方は私の?」「しもべー!」っていう掛け合いなんかもやっていたんですけど、それも楽しんでやってくださいました(笑)。ファンの方は本当に優しいんです‼それにしても12月25日のクリスマスライブで高笑いをしていなかったら、神崎すみれと出会えなかったかも…そう思うと、すみれ役は神様からのクリスマスプレゼント♥まさに「奇跡の鐘」が鳴った日でした。
──そしてゲーム『サクラ大戦』のシナリオや神崎すみれというキャラクターを初めて見た印象は?
富沢最初のお仕事はゲームのオープニングテーマ「檄!帝国華撃団」(「ゲキテイ」)とエンディングテーマ「花咲く乙女」のレコーディングだったんですけど、そのスタジオで初めて花組のメンバーと広井王子さんと曲を作った田中公平さんが一堂に会し、花組全員のキャラクターデザインも見せていただきました。「あっ、(田中)真弓さんはそういうキャラなんですね」「ちーちゃんはどんなキャラ?」ってみんなで盛り上がって(笑)。私はすみれを初めて見たとき「なんてスタイリッシュでかっこいいんだろう」と思ったんです。顔はもちろんキレイだし、着物の裾から見える足と真っ白いロングブーツがちょっと悩ましくセクシーで。こんな素敵なキャラを演じられるなんて…と、すごくうれしかったのを覚えています。
──その初仕事であるレコーディングはいかがでした?
富沢最初にレコーディングしたのは「ゲキテイ」だったんですけど、私より先に録っていたちーちゃんの歌声があまりにも素晴らしくて。そもそも歌のお上手な人なんですけど、聴いた瞬間、心が震えるような、沸き立つような……魂を揺さぶられるような感覚になったんです。そのあと「花咲く乙女」を収録したんですけど、今度はとっても美しい流れるような旋律に驚かされました。最後、花組の皆んなで「帝国華撃団♪」と力強く歌ったあと、ちーちゃんのソロで静かに終わるのですが、本当にドラマチックなんです。私達帝都・花組は降魔が出てきたら光武に乗って帝国華撃団として勇敢に戦うのですが、彼女たちの日常はステージで歌って踊ってショウを繰り広げる“歌劇団”なんだっていうメッセージが歌詞の中に散りばめられていて、それを歌っているときに神崎すみれとはどういう人なのか、『サクラ大戦』とはどういう物語なのかがなんとなくわかった気がしたし、「このプロジェクトはどういう風に展開するだろう?」ってすごくワクワクしました。
──これは素人考えなんですけど、台本や映像がない状態、しかも歌声で役作りをするのって大変だったりはしないんですか?
富沢そこは広井さんの歌詞と公平先生の楽曲の力なんですけど、曲を聴いているだけ、歌っているだけでキャラクターのイメージが膨らんでくるんです。「ゲキテイ」や「花咲く乙女」はまさに帝国華撃団にピッタリ‼またソロの曲は、それぞれのキャラクターの生まれた国、育った環境、性格、個性等が楽曲を通し、まるで目に浮かぶかのようにストーリーとして成立してくるので感動します。(広井さんと公平先生のタッグは最強です‼)なので確かにキャラクターソングとゲームの収録の順番は普通とは逆だったんですけど、だからといって役作りに困った記憶はないですね。
──あと富沢さんは最初のとおりソロでライブを行っていたり、当時は泉谷しげるさんと懇意になさっていたり、プロレスラー・安生洋二さんたちのユニット、ゴールデンカップスのCDに参加なさったりもしています。
富沢はい。
──そうやって積極的に音楽活動をなさっている方が聴いても、田中公平さんの楽曲はやっぱりすごい?
富沢もう天才ですね。音楽界では超エリート。クラシックをはじめ、あらゆるジャンルの知識の豊富さは勿論のことですが、公平先生は、作品全体の世界感やそれぞれのキャラクターを把握する能力に長けている方。なので『サクラ大戦』の世界やそれぞれのキャラクターのイメージを音に乗せることができる。メロディを聴くだけで、その曲を歌うキャラクターの姿、それからゲームや歌謡ショウのシーンすらも浮かんでくるんです。本当に「恐れ入りました」と言うしかないですね。それにしても私が神崎すみれとして初めて歌ったソロ曲なんて「なやましマンボ」ですよ(笑)。
──今となってはすみれの代表曲ですけど、確かにすごいタイトルですね(笑)。
富沢はい(笑)。また広井さんの歌詞が粋でとてもお洒落なんです。すみれのセクシーで悩ましい着物姿を描写しつつ小悪魔的な女心を重ね合わせる。そこにマンボのリズムを合体させるんですから(笑)。でもだからこそイヤらしくなりすぎないんですよね。広井さんの歌詞が公平先生の作ったマンボの軽快なリズムとメロディに乗った瞬間、歌っている私としてはすごい快感になるんです(笑)。しかも歌謡ショウでは会場が一体となって「マンボ!」って言ってくださる時は最高に幸せです‼公平先生は「なんで私が歌うと気持ちのいいメロディを知っているんですか?」「歌謡ショウでみなさんが合唱することは想定していたんですか?」って聞きたくなるくらい、私たちのこと、お客さんたちのことを知っていらっしゃるんですよね。
──では基本的に「サクラ大戦」楽曲のレコーディングはスムーズでした?
富沢いいえ、ハードルが高く難しい曲はいっぱいありました(笑)。でも新しい曲を歌わせていただく度に今度はまたこんなステキな曲を歌わせていただけるんだ…という新鮮な喜びと心地よい緊張感がいつもありました。広井さんの歌詞も純粋に感動する詞から、遊び心満載の詞と、引き出しの多さに脱帽です。曲のタイトルだけでもユニークで笑っちゃうのは「なやましマンボ」もそうですが、あと私と真弓さん、すみれと(桐島)カンナのデュエット曲なんて「愛はダイヤ」ですよ? 「愛はダイヤよ。愛はお金よ。愛は形よ」って、広井さんすごいこと言うなあ、って感じですよね(笑)。でもゲームの中のすみれとカンナの関係を考えると「あり」だし、そういう歌詞を書いておきながら、さくらとマリアのデュエット曲は「愛ゆえに」。「愛ゆえに私の命をあなたに捧げる」という歌詞。それと私たちの「愛はダイヤ」が同じ作品の楽曲として並んでいる。純愛と物質主義の愛の対比が実に面白くて(笑)。でも後日、広井さんと公平先生に「私も『愛ゆえに』みたいな純粋な愛の歌を歌いたいわぁ~」ってお願いをしたら、のちにすみれとカンナのために書き下ろしてくださった楽曲が『愛は永久に』なんです。
──おおっ!
富沢「愛は永久に」は『紅蜥蜴』という歌謡ショウ(1999年)の演目のための曲だったんですけど、デモテープをいただいて、オーケストラアレンジされたイントロが流れた瞬間、胸が熱くなり泣いちゃいました。そのくらい感動的な曲でしたね。
── 一方、ゲームの収録はいかがでした?
富沢そこは私たちの本業なので楽しかったですね。特にすみれは喜怒哀楽が激しいキャラ。とても遊べる要素のある役だったので、「このシーンはちょっと思い切った芝居をしてみよう」とか「あのシーンはしっかり芯を持ってやろう」という感じで自由に演じさせてもらいました。
──そして1996年、ゲーム『サクラ大戦』が大ヒットを収めます。
富沢私は最初に主題歌をレコーディングしたときから「絶対『サクラ』はヒットする」と直感していました。設定やストーリーの面白さ、キャラクターの魅力、演じる役者さんのバラエティ豊富さ、広井さんの豪腕、公平先生の音楽。すべてがひとつになったら絶対売れるだろうな、って。ただ、そうやってみなさんに愛していただいたからこそ、最初の新宿厚生年金会館での歌謡ショウ(1997年)の開幕まではすごく不安でしたね。キャラクターのコスプレをした私たちを見てお客さんはどういう反応をするんだろう?って。もういろんな思いが渦巻いていたんですけど、オケピ(オーケストラピット)のオーケストラの方々が公平先生の指揮で「ゲキテイ」のイントロを奏でて、それと同時に舞台の幕越しに私たちのシルエットが映し出された瞬間、会場の地面が揺れるほどの声援が返ってきて。その大歓声と拍手を聞いたとき、感動で鳥肌が立ったのを今もはっきりと覚えています。
──富沢さんが富沢さんとして何かの役を演じるミュージカルではなく、富沢さんが神崎すみれとしてさらに別の役を演じる歌謡ショウという形態に戸惑いは?
富沢私に限らず、役作りの面では皆さん悩むところはあったと思います。すみれとカンナが主演した『紅蜥蜴』であれば、カンナの演じる明智小次郎という役がすごくシリアスなキャラクターで。ゲームの中のカンナはすみれと仲良くケンカしている間柄なんだけど、舞台では二枚目を演じなければならない。だから真弓さんは「身長も低いし私が二枚目なんて……」と最初はそうおっしゃっていたんですけど、とんでもない‼それどころか、私にとって最も忘れられないショウになりました。舞台「紅蜥蜴」のクライマックスではすみれ演じる紅蜥蜴が愛する明智に撃たれて死ぬシーンで、すみれとカンナが「愛は永久に」を歌うんですけど、それがとてもドラマチックで。私は泣きそうになるのを必死でこらえながら歌っていたんですけど、真弓さんは涙を流しながらも、倒れる私をしっかり支えつつ、しかも見事に歌い切るんです。真弓さん演じる明智は本当にステキで、すみれとカンナでああいうお芝居ができたのはこの上ない倖せでした。
──そして一連の歌謡ショウが開催されるのと並行して、『サクラ大戦 桜華絢爛』(1997年)、『サクラ大戦 轟華絢爛』(1999年)というOVA2作品がリリースされた上に、テレビアニメ版(2000年)が放送され、劇場版アニメ(2001年)も公開。さらに2003年には『サクラ大戦 神崎すみれ 引退記念 す・み・れ』という、文字どおりすみれにフォーカスを当てたOVAも発売されました。
富沢そうですね。
──ちょうどこの頃、富沢さんはご結婚をなさって、仕事をちょっとセーブしようとなさっていた。その富沢美智恵という人物の現実の物語と「サクラ大戦」の物語をリンクさせようというアイデアを聞いたときのお気持ちは?
富沢もうただただ恐縮でした!!OVAをリリースする前の2002年1月のお正月公演で「春恋紫花夢惜別」という、すみれの引退記念公演を実際に青山劇場で5日間やらせていただきました。神崎すみれの引退の花道を歌謡ショウという形で特別に飾っていただけたことは、言い尽くせないほど感謝の気持ちでいっぱいです。それだけにOVA化のお話を聞いたときは「引退公演だけでもありがたいのにOVA!?」ってすごくビックリしました。ただ、すみれのファンの方の中には「地方に住んでいて引退公演を観に行けない」という方もたくさんいらっしゃったので、OVAという形で再現できるのは光栄であり、とてもうれしかったですね。
──その引退興行の収録っていかがでした?
富沢緊張しました!(即答) 私の中では2002年の引退記念公演で一度、神崎すみれという人のキャリアにピリオドを打ったつもりだったので、当時の情熱や想いをもう一度沸き立たせるところから役作りを始めたことを覚えています。その新たな情熱を胸にすみれの引退に臨んだので、いつものアフレコとはちょっと違いましたね。しかも泣きそうになるシーンもいっぱいありましたし。
──具体的には?
富沢帝国華撃団の元総司令の米田(一基)さんに屋形船の中で「すみれ、ありがとうな」って言われたシーンは今でも思い出すと泣けちゃうし、副司令の(藤枝)あやめさんに「ごくろうさま」って声をかけてもらうシーンもそうですし。後、いつもはケンカしていたカンナが号泣するシーンも、その愛の大きさに涙が出そうになりました。そして最後に「もう私じゃなくて、あなたがトップスタアなのよ」ってさくらにバトンを渡すすみれの姿も感動的でした。他にもたくさんあります(笑)。
──最後、劇中で描かれる引退興行でのすみれのあいさつも印象的でした。
富沢ありがとうございます。すみれのラストメッセージは大元になる文面は広井さんが書いてくださって、そこに私なりのすみれの想いを付け加えさせて頂きました。実際のすみれの引退公演の舞台では「花咲く乙女」のメロディをバックにすみれが最後の挨拶をするんですが、OVAでも全く同じメッセージのまま完全に再現してくださっているんです。それは本当に感激しました‼スタッフ、関係者の皆様の愛と優しさにも泣けちゃいました。
──神崎すみれが、そうやって引退記念興行とそのアニメ版が企画されるほど愛される理由はどこにあると思いますか?
富沢まず文句なしにキレイじゃないですか(笑)。華麗でスタイル抜群でセクシー。お嬢様として我がままで気位の高いところも可愛らしく、高笑いは最大のチャームポイント(笑)。でも戦闘になると帝都や仲間を守るために自分の命を賭ける勇気も持っている。そのすべての要素を兼ね備えているからこそ、すみれは魅力的だと思うんですけど、ただどれだけ私が一生懸命演じたとしても、それを受け取ってくれる方がいなければ人気キャラクターにならなかったと思うんです。「すみれのここが好き」「あのシーンのすみれが好き」って、すみれを愛して応援してくださるファンの皆様が居てくださったからこそすみれのファンの輪が広がっていったんだと思っています♥。
(取材・文=成松哲/撮影=はぎひさこ)
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応募締め切り
2020年3月25日(水)23:59まで
第一弾
小林沙苗 インタビュー
第二弾
日髙のり子 インタビュー
第四弾
横山智佐 インタビュー