小林沙苗氏 小林沙苗氏

3月18日、『サクラ大戦』OVAシリーズのBlu-rayボックスが期間限定販売される。

『サクラ大戦』OVAシリーズ Blu-rayボックス
ご購入・ご予約はこちら

このボックスは『サクラ大戦 ~桜華絢爛~(全4話)』『サクラ大戦 ~轟華絢爛~(全6話)』『サクラ大戦 神崎すみれ引退記念 す・み・れ』『サクラ大戦 エコール・ド・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ニューヨーク・紐育(全6話)』という6つのOVA作品をパッケージしたタイトル。きゃにめではこのアイテムの発売を記念して、各作品のキャストのインタビュー連載を掲載する。

その第1弾に登場していただくのは2007年のOVA『サクラ大戦 ニューヨーク・紐育』、そして2005年のゲーム『サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜』のメインヒロイン、ジェミニ・サンライズを演じた小林沙苗。アニメの見所はもちろん、「サクラ大戦」シリーズとの出会い、“サムライを愛してやまないカウガール”ジェミニや彼女が所属する紐育華撃団との思い出、「サクラ大戦」が愛される理由など、幅広い話を聞いた。

──「サクラ大戦」シリーズにご出演なさるきっかけは?

小林スタジオでオーディションを受けました。オーディションの候補選びで、原作の広井王子さんが「サクラ大戦の新作のヒロインを探している」という話を帝都(『サクラ大戦』『サクラ大戦2』)に出演している松野太紀さんにしたときに、私の名前を挙げてくださったみたいなんです。ちょうどその頃、私は松野さんと外画(外国映画・ドラマの吹き替え)のレギュラーが一緒ですごく元気のいい女の子の役をやっていたので……。

──松野さんが、ゲーム『サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜』のジェミニ・サンライズ役にピッタリだろう、とオーディションに推薦してくれたということ?

小林そのようです。オーディション前に広井さんと松野さんとの食事会に誘われました。当然私はテストやオーディション的なものの一環なんだろうなと思って緊張して行ったんですけど、本当に楽しく食事をするだけで。当時広井さんは温泉にハマっていたらしく、ずーっと「○○温泉はいいよ」「このあいだ××温泉にみんなで行ったんだ」っていう話をなさっていました(笑)。「サクラ大戦」についても、その食事会の最後の方にシリーズの歴史や今後のビジョンみたいなものを聞かされただけで、特に「『サクラ』の新作に」みたいな打診はなかった気がします。後日あらためてオーディションの日程調整が事務所に来ました。

──ではジェミニ役に起用されたきっかけは……。

小林何だったんでしょうね(笑)。食事会では温泉の話しかしてないですし。ただ、紐育華撃団のメンバーはみんなそうだったみたいで。サジータ(・ワインバーグ)役も「今、女の子に人気の女性声優って誰?」って広井さんがリサーチしていたら「皆川純子さん」っていう話になったらしいんですけど、純ちゃんはオーディションの前にカラオケに一緒に行ったらしいです。「歌を歌ってください」って(笑)。みんな、正式なオーディションの前に広井さんとの顔合わせがあったみたいです。

──みなさんそれぞれ、その顔合わせのときに広井さんのアンテナに引っかかる何かを発信なさってたんでしょうね。「サクラ大戦」シリーズというビッグタイトルのメインヒロインを演じることに対する期待やプレッシャーはおありになりました?

小林ゲームをあまりプレイするほうではないのですが、それでも『サクラ大戦』の主題歌「檄!帝国華撃団」は知っていたので「有名なタイトルの新作のヒロインなんだな」という印象でした。ただ当時の事務所の方がタイトルの大きさに応援の声をすごくかけてくれたので、どんどんプレッシャーが大きくなっていった感じはありますね(笑)。あと広井さんから「『サクラ大戦』シリーズはキャストが実際に舞台に出る歌謡ショウをやっているから、一度観てみてください」って言われて、観に行かせていただいたら、紅蘭さんが宙を舞ってたんですよ!! 3時間のショウのあいだ、歌お芝居ダンス等、皆さん素晴らしくてビックリしっぱなしで、終わったあとは「私もこれをやるのかなあ」とまたプレッシャーが襲ってきました。

──その『サクラ大戦V』のシナリオを読んだときの印象は?

小林ジェミニはその前に『EPISODE 0』(『サクラ大戦V EPISODE 0〜荒野のサムライ娘〜』)という『V』以前の姿を描いた作品があったので……。

──そうでしたね。

小林で、その中のジェミニはすごくわかりやすかったんです。元気で明るい女の子。笑うときは思いっきり笑うし、怒るときは思いっきり怒るし、泣くときは思いっきり泣くし、ラリーに跨りフワちゃんを守って戦うカッコよさもあり。感情をすごくストレートに出すキャラクターだったので、役作りにはそんなに苦労しなかったんですけど、『V』ではちょっと苦労があって……。

──それはなぜでしょう?

小林そうやって感情のままに生きてきたジェミニが大都会にやって来たところから『V』は始まるんですけど、最初はリトルリップ・シアターの掃除人をしながら、紐育歌劇団・星組のスタアに憧れているという状態だったので、勢いよく前に前に走っていたジェミニが誰かにうしろから引っ張られた感じがしたんです。大都会に来て、自分が田舎者だってことを思い知らされて、“らしさ”を発揮できない。「ボクなんかダメだ」というところから物語が始まっていたから、演じている私もちょっと「おっとっと」ってなっちゃったんです。

──でも環境が変わったことで本来の自分を出せなくなるジェミニ像があったから、物語に深みも増したし、キャラクターが立体的になったのでは?

小林そうなんですよね。大都会で悩んだり失敗したりしながら成長して、本来の自分を取り戻していくジェミニの姿があったから、ゲームをプレイしているみなさんもより親しみが湧いたり感動できたりしたんだと思います。

──小林さんにとってジェミニってどういう存在ですか?

小林それまでにも明るい役をやったことはあるんですけど、同じ明るい役でもジェミニの存在はかなり大きいですね。演じていると浄化されるというか(笑)。人を思いやることができるまっすぐなキャラクターなので、演じていると私も素直な気持ちになれるんです。本来はアフレコ後まで役を引きずるタイプではない……スタジオでは悲しみや怒りをもちろん爆発させるし、家で台本を読んでいて泣いてしまうこともあるんだけど、基本的には役を離れたら、いつもの小林沙苗に戻れるんですが、ジェミニに関しては、アフレコでも歌録りでもレビューショウでも、彼女の声を出すとそのあとも何となく気持ちがいいんです。

小林 沙苗氏

──おお! 一方、紐育歌劇団・華撃団の面々の印象は?

小林ゲームは一人ひとり別々に収録するので、全員集まったのは最初のレビュウショウ(2006年の『紐育レビュウショウ 〜歌う♪大紐育♪〜』)のレッスンやリハーサルのときだったと思うんですけど、共演者のみんなは戦友って感じですね。理由は、田中公平先生の楽曲はどれも美しく素晴らしいんですが難しくて。レコーディングで1曲ずつ録るのでも大変なのに、レビュウショウでは衣装を着て踊りながら、何曲も歌うことに慣れず。出来ないことが申し訳なくて……だからみんなで助け合いながら必死で頑張ってたんです(涙)。稽古帰りの駅のホームで誰かが泣き出して、「大丈夫だよ」「本番はまだ明日じゃないから」って慰めながら私も泣いちゃう、ぐらい(笑)。

──そして初回のレビュウショウの翌年、2007年にはOVA『サクラ大戦 ニューヨーク・紐育』が制作されました。

小林『V』での戦いが終わったあとの物語なんですが「しっかり作られているな」という印象があります。キャラクターそれぞれの日常だったり、それぞれの戦いだったりがギュッと詰め込まれている。全6話とコンパクトなんですが、ちゃんと紐育華撃団全員の姿を追っているので、ゲームを遊んでくださった方はもちろん、アニメで紐育華撃団を知ったという人にも楽しんでもらえるんじゃないかな? と当時も思っていた気します。……あっ、ただこれもやっぱり歌が大変でした…。

──先ほど小林さんが言及していた「檄!帝国華撃団」なんかは行進曲・軍歌をイメージさせる楽曲だけど、『サクラ大戦V』の主題歌「地上の戦士」は……。

小林ジャズです!公平先生によると紐育が舞台だからジャズにしているそうです、しかもそれまでの「サクラ大戦」楽曲よりも少し難しくしたそうで(汗)

──「檄!帝国華撃団」もカッコいいけど、十分複雑な曲でしたよ。

小林ですよね。なのに歌う私たちのスキルの少し上をいくような曲作りをなさったようです……。

──「サクラ大戦」というシリーズを重ねることで田中さんはもちろん、ファンの方の期待のハードルも上がっていっていたからなんでしょうね。

小林それに応えるのが本当に大変でした(笑)。他にOVAには「地上の戦士」以外にエンディングテーマとして「タブー」「夜明け前」「ポアゾン〜クレオパトラより〜」と3曲のエンディングテーマが入っていて、どれもとても素敵な曲なんですよ。

──じゃあBlu-rayをお求めの方は……。

小林公平先生のメロディも広井さんの歌詞も本当に素敵なのでじっくりと楽しんでください。どうか私の苦労話は忘れて(笑)

──初代のゲーム『サクラ大戦』が1996年に発売されて、『サクラ大戦V』は2005年リリース。そしてその2年後にはOVAが制作され、さらに2020年の今また、それがBlu-rayとして再リリースされる。なんで「サクラ大戦」というタイトルはここまで長く愛されるんだと思います?

小林私たちが『V』を収録する時点で10年近い歴史のある作品だったので長く続いていくとは思っていたんですけど、確かに今も尚っていうのはすごいですよね。私は今も「サクラが好きです」「ジェミニが好きです」というファンの方にお会いします。ひとつには歌謡ショウ・レビュウショウを定期的に続けているから、皆さんにいつまでも応援していただける作品になっていると思います。本当に有難いです。

──小林さんのフィルモグラフィの中には『サクラ大戦V』以外にも代表作と呼べるタイトルがズラッと並んでいる。それでも今なおジェミニに言及する人がけっこういるというのは、やはり驚くべきことな気がするんですよ。

小林確かに。もし何か理由があるとしたら、シリーズにかかわったすべての役者さんやスタッフさんが「サクラ」が好きだからかもしれないですね。だからこそゲームが発売されたり、アニメが放送されたりしていないときにもショウが開かれるし、私たちも出演して「サクラ」を盛り上げようとする。そうするとファンの方も応援してくださる。お互い応援し合っている状態なのは面白いし、それが相乗効果を生んでいるんでしょうね。

──さっきおっしゃっていたとおり、小林さん自身、ゲームキャラ、アニメキャラ、そして舞台役者として楽しくジェミニを演じているから……。

小林ファンの方も「ジェミニを観ていると笑顔になれます」って言ってくれるのかもしれないです。私もジェミニはもちろん、ほかの紐育華撃団のメンバーも大好きですし。それはやっぱりレビュウショウの経験が大きくて。声優の仕事は基本的にキャスト全員が同じ方向、モニター画面を観ながらするものなんですけど、舞台って「人ってこんなに他人と見つめ合うことがあるのか」っていうくらい視線を交わしながらお芝居をしなきゃならない。それが逆にそこに仲間がいることを意識させてくれるんです。ジェミニと紐育の仲間はスポーツチームと同じ。ひとつの目標に向かって一緒にがんばる集団みたいなものだと思っています。

──練習中には一緒に涙までした仲間ですもんね(笑)。

小林そうなんです(笑)。『〜ニューヨーク・紐育』はそういう経験をしたあとの紐育華撃団がアフレコスタジオに集まって録った作品だから、ほかのアニメと同じようにみんなモニターを観ながらお芝居をしてはいるんだけど、役者同士の関係性やスタジオの空気感はちょっと違っていて。OVAにはその雰囲気も収録されている気がするので、そこにも注目して観てもらいたいですね。

(取材・文=成松哲/撮影=はぎひさこ)

プレゼント情報

チェキ

きゃにめプライム会員限定でサイン入りチェキセットを5名様にプレゼント!

応募締め切り

2020年3月25日(水)23:59まで

プレゼントは「きゃにめプライム」にログインしてマイページの「ポイントを使う」からご確認ください。

ログイン

「きゃにめプライム」に未登録の方はこちら

新規登録

第二弾

日髙のり子 インタビュー

第三弾

富沢美智恵 インタビュー

第四弾

横山智佐 インタビュー

サクラ大戦
サクラ大戦特集TOPへ