横山智佐氏 横山智佐氏

3月18日、『サクラ大戦』OVAシリーズのBlu-rayボックスが期間限定販売された。

『サクラ大戦』OVAシリーズ Blu-rayボックス
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このボックスは『サクラ大戦 ~桜華絢爛~(全4話)』『サクラ大戦 ~轟華絢爛~(全6話)』『サクラ大戦 神崎すみれ引退記念 す・み・れ』『サクラ大戦 エコール・ド・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里(全3話)』『サクラ大戦 ニューヨーク・紐育(全6話)』という6つのOVA作品をパッケージしたタイトル。きゃにめではこのアイテムの発売を記念して、各作品のキャストのインタビュー連載を掲載する。

最終回となる今回ご登場いただくのは、ゲーム『サクラ大戦』、『サクラ大戦2』、OVA『サクラ大戦 ~桜華絢爛~』『サクラ大戦 ~轟華絢爛~』で真宮寺さくら役を務めた横山智佐。1996年のゲーム発売以降、25年にわたって連綿と続く物語のメインヒロインは、真宮寺さくら、そして「サクラ大戦」というプロジェクトをいかに見ているのか? その「サクラ」観に迫った。

——横山さんと『サクラ大戦』の出会いは?

横山プロデューサーの広井王子さんが『サクラ大戦』のプロジェクトを立ち上げるにあたってキャストを探していらっしゃって。当時、私は『鬼神童子ZENKI』というアニメで呪文を叫ぶ女の子の役をやっていたんですけど、その叫び声を気に入っていただけたみたいです。

——そして「真宮寺さくら役に」というオファーがあった?

横山いえ、当時はちびっ子役を演じることが多かったのでアイリス役になる可能性もあったみたいです。ただ、その頃から広井さんの頭の中ではすでにゲームだけではなく声優が実際に出演する歌謡ショウの構想もあったらしいんです。それでいろいろな劇団を観に行っていたそうなんですけど、劇団21世紀FOXの舞台で西原久美子さんを見つけて。「子どもの声でしゃべっている上に、その声で歌える役者がいる」って(笑)。それでアイリス役は西原さん、さくら役は横山ということになったらしいです。それからマリア(・タチバナ)役の高乃麗さんはクラブで歌っていたのを観て決めたっておっしゃっていましたね。

——では、横山さんも「サクラ大戦」シリーズはゲームから舞台まで幅広く展開するメディアミックス企画であることは最初から折り込み済みだった?

横山そうですね。「面白いこと思いついただろ?」という顔をした広井さんに「普段は『帝国歌劇団』としてミュージカルをやっていて、戦う時は『帝国華撃団』っていう設定のゲームで、実際にキャストもステージに上がるんだよ」と聞かされていました(笑)。

——笑顔でお話なさってますけど、声の芝居だけでなく、舞台でのお芝居も求められるのって声優さんにとっては大変なのでは?

横山その話を聞いたときは「あっ、ゲームのイベントをやるんだ」くらいに考えていたんです(笑)。声優にキャラクターソングは付きものなので、アニメやゲームの劇中で歌うことは珍しくなかったですし、「サクラのゲームソングをファンイベントで歌うんだろうな」くらいの気持ちだったんです。ここまで特別な舞台になるとは思っていませんでした。

——ところが実際にプロジェクトが始まってみたら異例ずくめだったわけですよね? 先日、富沢美智恵さんにうかがったんですけど『サクラ大戦』の最初の仕事ってオープニングテーマの「檄!帝国華撃団」(「ゲキテイ」)とエンディングテーマ「花咲く乙女」のレコーディングだったんですよね?

横山そうなんです。花組が一堂に集められて、レコーディングスタジオで初めてキャラクターデザインを見せていただきました。藤島(康介)先生のイラストがあまりに素敵だったので「私、こんなかわいい女の子役でいいのかしら?私の声が合うかしら?」って不安になって、しかもセリフをひと言も発したことがないのに「では、歌を録ります」と言われてまたビックリして(笑)。広井さんにキャラクターの性格を説明をしていただいて、作曲の田中公平さんに歌い方のリクエストをいただいて、真宮寺さくらという人や花組を作っていきました。

——歌で役作りをしたあとのゲームの収録はスムーズでした?

横山いえ、ゲームの収録も独特でしたね。音響監督の佐藤敏夫さんは外画(外国の映画・ドラマ)の吹き替えの収録を中心に活躍なさっている方で、ゲームやアニメとはまた違う演技指導やキャラクター作りをなさるんですよ。さくらであれば「大和撫子で、むしろ個性がないのが個性なので、なにもしないでください」「(神崎)すみれとケンカする場面も、高飛車なすみれと対等にケンカはしないでください」「すみれと同じテンションにしないことで、さくらはより良くなるから」という感じで。「ケンカをしているんだから、セリフに怒りの感情を乗せはするんだけど、でもなにもしていないように感じてもらうにはどうすればいいんだろう?」ってたくさん悩んだ記憶があります。

——当時、横山さんご自身は真宮寺さくらという人物をどうご覧になっていました?

横山メインヒロインですし、やっぱり愛されるキャラクターでありたいな、と思っていました。個性がないことが個性かもしれないけど、ちゃんとかわいらしいし…。さくらってドジなんですよね。収録しているときに「さくらちゃん、ちゃんとしないと!」「そんな調子だとお友だちがいなくなっちゃうよ!」って心配になっちゃったくらいのドジっぷりなんです(笑)。だから不器用なんだけどそこに悪気はないキャラクター、愛されるドジな子であることを心がけていましたね。

——結果、横山さんの目論見は大成功。『サクラ大戦』は発売まもなく人気を集めました。その熱狂みたいなものってご自身の耳に届いたりは?

横山これはゲームが発売されたころのことではなくて、まさに今思うことなんですけど、これだけ長く愛されるキャラクターに出会ったのは初めてだったし、そのことが今とてもうれしくて…あ、当時もうれしかったですね。アニメ作品は3カ月〜1年で終わるものが多いんです。だからキャラクターに慣れてきて面白みが出てきて、キャスト陣のチームワークができあがったころで現場が解散になってしまうことも少なくないんです。でも真宮寺さくらという人とはどんどん思い出を積み重ねていける楽しさ、幸せを感じることができるんです。

——その積み重なる思い出の中でも特に大きなもののひとつに歌謡ショウがあるかと思うんですけど、先ほどのお話だと……。

横山本当に軽く、イベントに参加する気持ちでいました。ところが、お稽古のスケジュールが1週間も組まれていて「あれ? 多いな」となって(笑)。普通のイベントだとリハーサルは当日に済ませるか、事前に組まれても1日程度。バンドさんが入るイベントの場合は事前リハーサルをするんですけど、それも1回音合わせをする感じですし…。最初は歌謡ショウ自体も歌のあいだにちょっとしたナレーションやお芝居が挟まるようなものだったんですよ。まさに、歌謡ショウ。そんななか、じつは高乃麗さんだけが「これは本格的な舞台だ」って覚悟をもって臨んでいらっしゃったんです。

横山智佐氏

——高乃さんだけが歌謡ショウの正体に気付いていた(笑)。

横山ほかの出演者はまったく気付いてなかったのに(笑)。とにもかくにも、私たち花組はいいイベントが出来たつもりでした。「ゲキテイ」のイントロが流れる中、スクリーン越しに私たちのシルエットが映し出されて、そのスクリーンが振り落とされた瞬間、超満員の新宿厚生年金会館が揺れるほどの歓声が上がった……ファンの方にも楽しんでいただけたと自負があるんですけど、スタッフさんの中には「これじゃあ終われないよな」という思いがあったみたいです。そして2年目以降は歌謡ショウ本番の1カ月前からお稽古に入る…修行が始まるようになりました(笑)。

——確かにその後の横山さんはステージ上で殺陣もすれば、トンボも切るようになりました。そうやって要求水準が高くなることがプレッシャーになったりは?

横山「私、ボーッとしてるのかな?」って思うくらいプレッシャーを感じたことがないんですよ(笑)。もうただただ「うれしい! 楽しい! 大好き!」っていうノリでやっていました。公平さんからいただく曲は毎回難しいからそれを歌いこなせるように練習して、しかもダンスも完璧にできるように特訓して、それから正義の心と破邪の力を持っている真宮寺さくらにどれだけ近付けるか…? お客さまの中にあるさくらのイメージと違ったら申し訳ないという思いはあるし、歌詞が飛んだり失敗すれば相当落ち込むんですけど、心のどこかに「私は声優が本業だ」という意識があるんです。ショウはいい意味で道草感覚。道草って楽しいじゃないですか(笑)。生真面目に声優としての道を歩くことも大切だけど、花組という仲間たちといつもとはちょっと違う道を歩いている感じなんです。そうすると珍しい花を見つけられたり、なぜか急に天気が変わったり。なんか楽しいことが起きるんですよね。

——あれだけハードなステージをこなすことに対しても、これだけの大規模プロジェクトの看板を背負うことに対してもすごく軽やかでいらっしゃるのに驚きました。

横山今、お話しながら「あれ? 私、責任感に欠けているのでは?」って気持ちになっていたので、そうおっしゃっていただけるとうれしいです(笑)。確かにショウに関しては常に「すごく楽しいな」と思っている…。どこか軽やかである気がしますね。

——そしてその歌謡ショウの初演と前後して1997年にOVA第1弾『サクラ大戦 〜桜華絢爛〜』が発表されて、1999年に第2弾『サクラ大戦 〜轟華絢爛〜』がリリースされました。

横山どちらも素晴らしい仕上がりの作品だったので、うれしくて誇らしかったですね。

——『〜桜華絢爛〜』はさくらが帝国華撃団に入団するまで、『サクラ大戦』の前日譚を描いています。

横山ゲームはキャストが1人ひとり、別々に声を収録するんですけど、アニメは30分のドラマをみんなで作ることができるし、実際に花組のみんなと対話できることがうれしかったです。それから帝都銀座の風景とか街を行く人々の様子がまるで映画のように描かれていたのが感動的でした。

——そうか。ゲームだと基本的にはキャラクターとプレイヤーの対話を中心に描いていれば成立するけど、アニメの場合、キャラクターの住む世界を描かないと説得力がなくなるのか。

横山そうなんですよね。そのおかげで『サクラ大戦』の舞台、“太正時代”の空気が私たちにもファンの方にも共有できたと思うし、「へえ、劇場の楽屋にはこんなにたくさんプレゼントが届くのか」みたいな描写があったのも、当時の帝都での花組の立ち位置がリアルになった気がして面白かったですし。

——一方『〜轟華絢爛〜』は1998年のゲーム『サクラ大戦2 〜君、死にたもうことなかれ〜』のサイドストーリーです。

横山ゲームの第2弾が作られるほど、みなさんに愛される作品に成長した「サクラ大戦」ならではのアニメだったと思っています。花組の日常を描くことでより濃い“サクラワールド”をご覧に入れたかったんだろうなって。(ソレッタ・)織姫のお父さんが出てきたり、さくらについてもおばあちゃんやおじいちゃん……権爺さんが出てきたり。それぞれのサイドストーリーをじっくり深く掘り下げている作品で、印象に残っているエピソードもたくさんあります。

——具体的には?

横山第1話ですね。マリアさんとさくらが乾杯するシーンがすごく好きです。それから、みんなで宴会をしているとき、さくらが竹をチョンチョンチョンと斬ったら、みんなの手元に盃の形になった竹が降ってくるみたいなアニメならではのコミカルなシーンがあったりする半面、打って変わって、悪役と対決するときには、その宴会のときのことをヒントにさくらがマリアさんに「乾杯」を暗号にして作戦を伝えてみたり。くだらなさとカッコよさが入り交じっている。すごく「サクラ大戦」らしくて好きですね。

——最後に、これはキャストのみなさんに聞いているんですけど、なんで「サクラ大戦」というシリーズは四半世紀にわたって愛され続けるんでしょう?

横山本当にみなさんが長く、熱く「サクラ」を愛してくださるのはうれしいです。なんでなんでしょうね?(笑) 広井さんの作った架空の太正の世界観やキャラタクター、あかほり(さとる)さんの脚本、公平さんの音楽という根っこ・土台がしっかり作られていた作品だからなのかもしれないですね。しかも歌謡ショウという新しい試みに取り組んだ作品で、そのショウは本当にふんだんにお金をかけてゴージャスに作られてはいるけど、派手に観せることが目的ではなく、ちゃんと「サクラ大戦」の世界と地続きになっているから、みなさん長く愛してくださるんだと思います。

——しかも年々、“「サクラ大戦」の輪”が広がっているじゃないですか。1996年リリースのゲームの舞台版を2010年代になってから日本武道館で行っている。つまり新しいファンを今なお生み出している。

横山そうですよね。学生時代に最初のゲームで遊んでいた方の中には、その後大人になって「サクラ大戦」から離れていく人もいたのでしょうが、でも大勢サクラワールドに残ってくれている。ゲームが発売されたときには生まれていなかった方も歌謡ショウをDVDで見たり、私のコスプレライブを観に来てくださっているんですよね。やっぱりそれは広井さんたちスタッフのみなさんが作った根っこが面白かったからなんだと思います。私たちキャストはいい意味で“ただの声優”であり、“ただの役者”。アフレコやショウに精一杯心を込めて取り組んでいただけですから。

(取材・文=成松哲/撮影=はぎひさこ)

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